創薬における細胞パネルスクリーニングと機能ゲノミクススクリーニングの利点



利用できる多くの選択肢の中から最適なセルベーススクリーニングを選ぶことはたちまちに意思決定が複雑になることがあります。ここでは、主な選択肢である細胞パネルスクリーニングと機能ゲノミクススクリーニングを概観します。

細胞パネルスクリーニングでは、遺伝的多様性をもつ種々の組織別の細胞株パネルに渡る薬剤応答データが得られます。このスクリーニングでは、薬剤耐性/感受性のエビデンスの提供、特定の疾患の治療に有効な薬剤の選択支援、臨床試験の患者層別化、臨床的に許容されるプロファイルをもつ薬剤のリパーパシング、作用機序(MoA)研究のデータの提供が可能となります。RNAiまたはCRISPRで遺伝子発現を調節する機能ゲノミクススクリーニング(FGS: Functional Genomic Screening)もまた、細胞パネルスクリーニングと類似した多くの問いに対して遺伝学の観点から応えることができます。さらには、FGSの活用で新規創薬ターゲットの同定やバリデーション、薬剤耐性/感受性の遺伝的基盤や遺伝的依存性(いわゆる合成致死)を明らかにできます。

 

私にはどちらのスクリーニングが必要ですか?

シンプルに言えば、それはNumbers Gameです(Figure 1)。たとえば、何百種の薬剤に対する細胞応答を調べることが目的である場合は、細胞パネルスクリーニングの開始をお勧めします。一方、少数の薬剤への細胞応答に影響を与える数十から数百種の遺伝子ターゲットの同定に関心がある場合は、FGSが最良の選択です。

細胞パネルスクリーニングでは、治療薬候補の特性評価された細胞株の感受性に対する分析ができます。さらに、お客様の薬剤候補がはっきりしたMoAをもつ薬剤と似たような応答プロファイルを有しているかどうかをみることで、創薬ターゲットの同定やMoAデータの取得が可能となります。しかし、お客様の薬剤が新規性を有していたり革新的なバイオ医薬品である場合は、似たように作用する薬剤は少ないので、この方法はそれほど有益ではないでしょう。薬剤のMoAが完全に明らかになっていなかったりアレイ化フォーマットでのアッセイが組めない場合は、FGSが本領を発揮します。ほとんどの新規薬剤候補のターゲット遺伝子の同定に活用できるためです。

同じように、FGSは薬剤併用に潜在的に必要な遺伝子相互作用、生物学的パスウェイの同定やMoAの解明に使われます。RNAi、CRISPRノックアウト、CRISPR転写活性化(CRISPRa)とCRISPR転写抑制(CRISPRi)のタンデムアプローチのいずれかによる遺伝子発現調節を通じて、治療効果や生物活性の促進に対してどの特定の遺伝子相互作用がおきているかに関する重要な生物学的情報がもたらされます。さらに、遺伝子ノックアウト/遺伝子発現調節とその後のタンパク質産物の間の生物学的な差異があるために、FGSでは潜在的な治療アウトカムの理解および適切な患者集団の層別化に必要不可欠な臨床的併用効果の要件を明らかにすることができます。多くの場合、細胞パネルのスクリーニングを行う研究者は、新薬や新規バイオ医薬品と併用効果がある、広範な治療薬の分析にも関心を示します。実際に、細胞パネルスクリーニングで見いだされた薬剤の併用作用は、臨床にトランスレーションされています。

Cell Panel Screens vs Functional Genomic Screens 

Figure 1. FGSと細胞パネルスクリーニングの類似点と相違点

 

新しいターゲットを見つける必要がある場合はどちらを選択すればよいですか?

現在、CRISPRスクリーニングは、新規薬剤のMoAの理解や耐性/感受性のメカニズムの特定に広く活用されていますが、それは潜在的な薬剤併用の新規組み合わせを見いだす手段にもなります。しかし、CRISPRスクリーニングの真の強みの1つは、創薬ターゲットの同定にあります。癌研究においては、CRISPRノックアウトスクリーニングは初期段階で活用され、このプロセスに役立ちましたが、現在では、CRISPRiおよびCRISPRaも活用されています。CRISPRiはノックアウトせずに遺伝子発現を低減させる一方で、CRISPRaは遺伝子発現を増強させます。CRISPRkoとCRISPRi、またはCRISPRiとCRISPRaを組み合わせると、このようなスクリーニングは、個々のスクリーニングで見いだされたターゲットをバリデーションした堅牢なデータセットとなり、新規創薬ターゲット探索の時間とコストの両方を削減できます。

 

2つのスクリーニングの連携

では、細胞パネルスクリーニングとFGSは単独でのみ利用すべきでしょうか?いいえ、そうではありません。これら2つのアプローチは、タンデムに組み合わせて利用するとより強力になります。たとえば、細胞パネルスクリーニングはフェノタイプスクリーニングの土台であり、特定の細胞フェノタイプの変化を通じて薬剤の影響を評価し、薬剤が細胞死を引き起こすのかどうかの確認を行います。このようなタイプの細胞パネルスクリーニングでは、創薬ターゲットやMoAが往々にして不明である場合があります。これが既に述べたようにFGSが速やかに役立つことができる理由です。

一連の創薬プロセスの中でどのスクリーニングを行うべきかの判断は、その意思決定プロセスを複雑になることがあります。Horizon Discoveryは、お客様と連携してスクリーニングデザインを支援しており、10年以上の経験を持っています。お客様は、安心して最高水準で実行できるスクリーニングをHorizonにお任せいただけます。マイルストーン毎のレポートの配信、実験結果の包括的な解釈を含め、定期的かつ広範なフィードバックを提供します。 是非、皆様への支援とサポートをさせていただきたいと思います。

 

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