CRISPRゲノム編集を検出および検証するための戦略



ゲノム編集実験を行った後、どのように結果をモニタリングしますか?ターゲット細胞にゲノム編集を導入するためのCRISPR戦略を選択した場合、ゲノム編集をどのように検証し、特徴づけますか?実験の目的とゲノム編集の性質に応じて適切なアッセイを選択することで、さまざまな情報量、情報の種類を得ることができます。

この記事では、最も一般的に利用されるアッセイを要約します。

方法

変異タイプ

アッセイ概要

Application

Benefit

Limitation

A. ミスマッチ検出アッセイ1,2

row1 mismatch

挿入または欠失(INDEL)

T7エンドヌクレアーゼIなどのエンドヌクレアーゼは、DNAヘテロ二本鎖の構造的変形を認識する。切断断片をゲル電気泳動で分離し、DNA切断とゲノム編集%を決定する。

細胞の混合集団におけるゲノム編集%の迅速な推定/最も効率的な実験条件の特定/更なる分析のための単一クローンのスクリーニング

シンプル/費用対効果が高い

標的タンパク質のヌクレオチド配列または機能に関する情報が無い/ホモ接合変異体を検出しない/すべての不一致が同じ効率で検出されるわけではない/高スループットの実験には適さない

B. RFLP

挿入または欠失(INDEL)、一塩基多型(SNP)

RFLP =(Restriction Fragment Length Polymorphism、制限酵素断片長多型)制限エンドヌクレアーゼ認識部位を生成または消失するSNPまたはINDELSを、遺伝子座特異的PCRプライマーを用いて増幅する。制限酵素による切断に続いてゲル電気泳動を行い、切断されたフラグメントのパターンを解析する。

細胞の混合集団におけるHDR%の迅速な推定/最も効率的な実験条件の特定/シーケンシングによる更なる分析のための単一クローンのスクリーニング

シンプル/費用対効果が高い/SNPおよびホモ接合変異体の検出

制限部位多型が必要/ヌクレオチド配列や機能に関する情報は無い

C. サンガーシーケンシング

row3 sanger

全ての変異タイプ

予想される突然変異部位周辺のゲノムDNA配列を、DNAシーケンシングによって解析する。

単一細胞クローンの遺伝子型の分析(アレル頻度やゲノム編集後の配列など、)

各アレルのヌクレオチド配列に関する情報

機能情報は得られない/時間のかかる手法

D. ウエスタンブロット

row4 westernblot

挿入または欠失(INDEL)、一塩基多型(SNP)、レポーター遺伝子

細胞から抽出したタンパク質を、ポリアクリルアミドゲル電気泳動によって分離した後、膜に転写し、標的タンパク質特異的抗体および二次検出抗体にハイブリダイズする。

タンパク質の発現レベルのモニタリング

シンプル/費用対効果が高い/タンパク質ノックアウトの可能性を示す

ヌクレオチド配列に関する情報は無い/タンパク質検出の有無は、必ずしも機能状態と相関しているわけでは無い/特異的抗体が必要

E. 表現型アッセイ

row5 pheno

全ての変異タイプ

標的遺伝子または細胞パスウェイに特異的なさまざまなアッセイ(酵素活性、細胞表面マーカー、アポトーシスまたは蛍光レポーターのモニタリング等)

ノックアウト細胞株の表現型の変化とそれらの生物学的関連性の監視モニタリングまたは特徴付け/最も効率的な実験条件の特定/目的の表現型を示すクローンの選択

ハイスループットが可能/機能情報が得られる/生物学的関連性のある手法

ヌクレオチド配列に関する情報は無い

F. NGS

全ての変異タイプ

クローン細胞株のゲノムDNAを、ハイスループットでシーケンスする。

アレル頻度やゲノム編集後の配列など、細胞の遺伝子型の分析/オフターゲットの特定/プール化CRISPRスクリーニングのコンテキストで、細胞集団内の濃縮または枯渇した遺伝子の特定

ハイスループットが可能/ヌクレオチド配列に関する情報が得られる

機能情報は得られない

G. TIDE3

挿入または欠失(INDEL)

TIDEソフトウェアは、編集済みサンプルとコントロール(未編集)サンプルのPCRアンプリコンの2つの標準サンガーシーケンシング反応からの定量的シーケンストレースデータに基づいて、標的細胞集団のDNAにおける主要なタイプの挿入と欠失の識別と頻度を定量化する分解アルゴリズムを採用している。

細胞の混合集団およびINDELサイズにおけるゲノム編集%の推定

費用対効果が高い/INDELの範囲に関する見解の提供

大きな欠失は解析不可/低品質のシーケンス実行ではうまく機能しない

 

Summary

ほとんどの研究目的において、分子レベルと表現型レベルの両面におけるゲノム編集の検証と特性評価は、それらの生物学的関連性を評価するために必要になります。

ゲノミクススクリーニングの場合は、表現型アッセイは、目的の表現型を示すゲノム編集を迅速にスクリーニングするための良いスタート地点となる可能性があります。

DNAミスマッチアッセイ、TIDE、RFLP、または表現型アッセイは、CRISPR実験の成功を評価し、目的のノックアウトまたはノックイン変異を持つ陽性クローンをスクリーニングするためのスタート地点としてよく利用されます。通常、この最初のステップの後に、シークエンスレベルおよび機能レベルでのゲノム編集の性質のより詳細な特性評価が行われます。したがって、典型的なゲノム編集実験では、多数のアッセイが連続して適用されます。

 

Author: Kathrin Kerschgens Ph.D. | Project Manager Cell Line Engineering

 

これらの検証手法については、以下のアプリケーションノートもご参照ください。

 

化学合成ガイドRNAを使用したCRISPRを介したノックアウトおよびノックインの濃縮のための蛍光Cas9 mRNA - appnote

Generating functional protein knockout in iPSCs using Edit-R™ reagents - appnote

A CRISPR-Cas9 gene engineering workflow: generating functional knockouts using Dharmacon™ Edit-R™ Cas9 and synthetic crRNA and tracrRNA - appnote

 

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References

1. R. D. Mashal, J. Koontz, J. Sklar, Detection of mutations by cleavage of DNA heteroduplexes with bacteriophage resolvases. Nat Genet 9, 177-183 (1995).

2. L. Vouillot, A. Thelie, N. Pollet, Comparison of T7EI and surveyor mismatch cleavage assays to detect mutations triggered by engineered nucleases. G3 (Bethesda) 5, 407-415 (2015).

3. E. K. Brinkman, T. Chen, M. Amendola, B. van Steensel, Easy quantitative assessment of genome editing by sequence trace decomposition. NAR 42, Issue 22, Pages e168 (2014).