細胞パネルスクリーニングの薬剤処理期間は遅効性薬剤のプロファイリングの重要因子



細胞パネルスクリーニングは創薬ツールボックスの中の必須なプロセスです。しかしながら、エピジェネティクスに関わるパスウェイを標的とした薬剤等の作用の遅い薬剤の反応プロファイリングを従来の短期間アッセイフォーマットで完全に解決するのは依然として課題があります。このような候補薬剤の効果の解明には長期間アッセイ条件の最適化が求められています。

Introduction

ハイスループット細胞パネルスクリーニングは、様々な種類のがん細胞株に対する多数の候補薬剤の薬効を迅速にテストするために、創薬研究で活用されています。このスクリーニングで増殖や増殖阻害など細胞に特定の影響を与える実験条件を効率的かつ効果的に探索でき、薬剤の感受性・耐性のメカニズム解明に有益な情報を獲得できます。このスクリーニングは、特定の疾患治療に有効な薬剤選択の支援、臨床試験の患者層別化、臨床的に許容されるプロファイルを有するドラックリパーパシングに活用でき、作用機序(mechanism of action: MoA)研究に関するデータを提供します。

細胞パネルスクリーニングとエピジェネティクス

細胞パネルスクリーニングアッセイでは、化合物(およびその他のモダリティ)を最大6日間まで通常テストし、多くの薬剤ではこの時間軸で必要な薬剤反応データが取得されます。しかしながら、従来の3~6日間のアッセイ期間では、エピジェネティクスに関わるパスウェイに対する作用の遅い薬剤の細胞反応を完全に特定または解決するために必要な分解能が得られない場合があります。

エピジェネティックな変化ががんの発生・進行に関与しているというエビデンスは増えています。たとえば、DNAメチル化の変化は、がん増殖を抑制する遺伝子の発現を抑制しがんの発症につながります。同様に、ヒストン修飾の変化は、ゲノムのアクセシビリティの変化および遺伝子発現に影響を与え、がん発生につながります。また、エピジェネティックな変化が化学療法やその他の治療法に対するがん細胞の抵抗性に寄与しているというエビデンスもあり、がんの効果的な治療はより困難になっています。したがって、エピジェネティクスは新規治療ターゲットを発見する機会を提供し、がん研究の重要な分野と現在みなされています。結果として、エピジェネティックなパスウェイをターゲットとする候補薬剤の薬効を明らかにするような適切なツールをもつことがより一層求められています。

HorizonのLong-Termアッセイ

作用の遅い薬剤(エピジェネティクス薬剤など)に対する細胞株の長期間に及ぶ感受性を研究するために、HorizonはLong-Termアッセイを開発しました。Long-Termアッセイは、様々ながん細胞株に対する特定の治療の長期的効果を調べるために10日間で実施するよう設計された細胞パネルスクリーニングです。あらゆるアッセイと同様に一貫性や再現性のある実験結果を得るには、細胞の高いクオリティと堅牢かつ標準化された細胞播種プロセスが必要不可欠ですが、これらはLong-Termアッセイでは特に必要不可欠です。Long-Termアッセイでは、より長い細胞培養期間で必要な解像度を提供するために、より高度な最適化が必要です。例えば、10日間の培養期間は、播種密度が低く最適化されているため、細胞継代や培地補充の必要がなく、実験的干渉を減らすことができます。さらに、Long-Termアッセイが効果的であるために極度に低い細胞播種密度に由来するばらつきを最小限に抑え、信頼できる実験結果を保証するため注意深い設計や管理が必要とされます。Long-Termアッセイから獲得できるデータは候補薬剤の作用機序に関わる重要な洞察を与え、がん治療の潜在的な治療ターゲットの同定に有用です。ただし、長期間アッセイの恩恵を受けるような特定のエピジェネティクス酵素ファミリーまたは化合物クラスがあるかどうかは現在明らかになっていません。したがって、スクリーニングを従来の6日間のアッセイで行うかまたはより長期間の時間軸で行うかを決定する際には、何らかの意思決定が必要になる場合もあります。

まとめ

HorizonのOncoSignature™ 2D Long-Termアッセイは、遺伝子改変細胞株カスタム作製サービス、機能ゲノミクスサービス、およびがん免疫アッセイサービスと組み合わせてお客様の創薬パイプラインの支援に活用できる一連のセルベースアッセイの一部です。