Wellcome Sanger研究所のバリアント探索を支援するRevvity細胞株製品の役割



ヒトゲノム計画の最大の功労者である英国に拠点をおくWellcome Sanger研究所は、価値が高いだけではなく野心的な研究プロジェクトを開始することで有名です。

そのような進行中のプロジェクトの一つがAtlas of Variant Effects(AVE)アライアンスで、同研究所はその創設メンバーです。AVEはタンパク質機能のバリアントの影響や疾患関連遺伝子や機能エレメントの遺伝子制御を明らかにすることを目的としています。その目標の達成に同研究所ではCRISPR/Cas9を介したハイスループットなSaturation Genome Editing(single nucleotide variants: SGE)を用いて、対象となる遺伝子内で生じえる全ての一塩基変異(SNV)の影響を探索しました。この技術を大スケールで機能させるために、相同配列依存的修復(homology-directed repair: HDR)により効率的に改変できる相同組換え(homologous repair: HR)率の高いハプロイド細胞プラットフォームを同研究所は必要としていました。以上の要件から同研究所はRevvityのHAP1 LIG4ノックアウト(HAP1 LIG4(-))細胞株にたどり着きました。

CRISPR/Cas9を介したゲノム編集では、そのメカニズム上、選択された遺伝子内の正確な位置にDNA二重鎖切断(DNA double-strand breaks: DDSB)がおこり、その切断は相同配列依存的修復(HDR;HRの一種)を受けます。細胞でDDSBが検出されると、通常HRまたは非相同末端接合(non-homologous end joining: NHEJ)のいずれかにより修復が始まります。NHEJは分裂細胞でも非分裂細胞でも優先的に使われる修復経路ですが、そのスピードとメカニズムの柔軟性により、CRISPR/Cas9遺伝子編集が妨害されることがあります。DNAリガーゼ4はNHEJの重要な構成要素であり、その親遺伝子LIG4のノックアウトでNHEJ経路が働かなくなることが研究で実証されています。NHEJ経路が不活性化されたRevvityのHAP1 LIG4(-)細胞株は、効率の高いCRISPR-Cas9遺伝子編集を必要とする実験に最適です。

Wellcome Sanger研究所は、自らが望む細胞プラットフォームを構築するために、まずHAP1 LIG4(-)細胞株から始め、安定的に発現するCas9ヌクレアーゼ(HAP1 LIG4(-) Cas9(+))を導入しました。この系統のハプロイドバックグラウンドは結果の解釈をシンプルにし、LIG4欠損とCas9の組み合わせはゲノム編集効率を著しく高めます。

Wellcome Sanger研究所のAVEアライアンスとRevvityのHAP1 LIG4(-)細胞株が果たした役割の詳細については、Wellcome Sanger研究所のヒト遺伝学プログラムの主任スタッフ科学者であるSebastian Gerety博士にインタビューしたホワイトペーパーをご覧ください。