単一の細胞内の複数の遺伝子のノックアウトは、生物学的表現型のより完全な研究を可能にし、相乗効果や関連する効果のより良い理解につながります。
トランスフェクションは細胞の集団で行われますが、この図は、複数の化学合成ガイドRNAを同一反応液中で同時に用い、最適なトランスフェクション条件で実験を行った場合は、細胞集団内に、最大3つの異なるゲノム編集を含む多くのシングルセルクローンが生じる可能性があることを図示しています(Figure 1)。
概念実証実験
遺伝子AXL、DNMT3B、およびPPIB(表1)を標的とするEdit-R化学合成crRNAおよびtracrRNAを、Cas9安定発現HEK293T細胞株にトランスフェクトするか、Cas9 mRNAまたはCas9タンパク質とコトランスフェクトしました。これらの各実験から、限界希釈法を使用して40〜90個のクローンを作製しました。各Cas9デリバリー方法について、ランダムに16個のクローンを、ターゲット遺伝子座のPCR増幅とサンガーシーケンシングによって、挿入および欠失(INDEL)について分析しました。サンガーシーケンシングトレースは、CRISPR IDツール(http://crispid.gbiomed.kuleuven.be/)を使用して解析しました。
Gene | Guide RNA targeting sequences |
---|---|
AXL | GGUUCCAACUCACCCAUAAC |
DNMT3B | GCUGAAUUACUCACGCCCCA |
PPIB | GUGUAUUUUGACCUACGAAU |
Table1. 多重で3つの遺伝子を標的にしたゲノム編集で使用されるガイドRNA配列
ランダムに選択された16のクローン細胞株から観察された堅牢な多重編集
16個のクローンの分析から、HorizonのCas9レンチウイルスを用いて作製されたCas9の安定発現細胞株を使用した場合、30%以上が3つの標的遺伝子座すべてにINDELを持っていることが観察されました。一方、3つのガイドRNAを、HorizonのCas9 mRNAとコデリバリーした場合は25%のクローンが、また、HorizonのCas9タンパク質を含むRNPとしてトランスフェクトした場合は6%のクローンが、3つの標的遺伝子座すべてにINDELを持っていることが観察されました。3つの遺伝子すべてが同時に編集されなかったクローンの場合、分析されたクローンの半分以上で、少なくとも1つの遺伝子が編集されていました(Table 2)。
Cas9 delivery | # of sequenced clonal lines | Wild type clones | 1 of 3 genes edited | 2 of 3 genes edited | 3 of 3 genes edited | Percent of clonal lines with at least 1 gene edited | Percent of clonal lines with 3 of 3 genes edited |
---|---|---|---|---|---|---|---|
Cas9 stable | 16 | 3 | 6 | 2 | 5 | 81% | 31% |
Cas9 mRNA | 16 | 3 | 7 | 2 | 4 | 81% | 25% |
Cas9 protein | 16 | 2 | 10 | 3 | 1 | 88% | 6% |
Table 2. 3つの標的遺伝子座のうち1つ、2つ、または3つでINDELが検出されたクローンの数
複数のCas9デリバリー方法による効率的な多重化ゲノム編集
最後にまとめると、1回のトランスフェクションで異なる化学合成ガイドRNAを使用して、1つの細胞で複数の遺伝子を編集できることを示しました。HorizonのEdit-R化学合成ガイドRNAは、実験目的に合わせて、複数のCas9デリバリー方法により、効率的にトランスフェクトすることができます。一部の細胞タイプは、複数のCas9誘導二本鎖DNA切断を許容しない場合や、二本鎖DNA切断修復中にゲノム再配列を起こしやすい場合があるため、実験結果は細胞タイプおよび遺伝子ターゲットによって異なる場合があります。最後に、ゲノム内のCRISPR / Cas9誘導INDELは遺伝子ノックアウトに対応する場合と対応しない場合があるため、適切なアッセイを使用して各遺伝子の機能喪失を確認する必要があります。